確かに社会保険の加入は義務ですが、罰則がないのも事実です
法人の場合、社会保険には強制加入義務があります。
しかし、次の場合には加入したくても加入できません。
1.取締役だけの会社で、従業員を雇用していない。かつ、取締役の役員報酬(給与)が発生していない場合
2.取締役及び従業員の全員が他の会社の従業員を兼務し、主たる給与がその他の会社から支給され、その会社で社会保険に加入している場合。
上記の場合の他に、加入義務はありますが、法律上の罰則がないため加入しなくても実質的に済ますことができてしまうのが現行法制度です。
この背景には、次のような事情があります。
設立したての会社で、経営がまだ安定していないのに社会保険に加入すると、支払いが滞ってしまい、社会保険事務所の督促手続きという事務負担が増えてしまうという事情です。
本来、社会保険・厚生年金の加入は法的義務ですので、その加入は当たり前なのですが、ところが、実際に加入しようと設立したての会社の経営者が社会保険加入の手続きをとると、社会保険事務所によっては、「面談」という手続きを要請される場合があります。
この面談は、本来、まったく無意味なもので、経営者にとっては無駄に時間を拘束され、腹が立つ場合がしばしばあります。
なぜ、面談の必要があるのか?と強く問い質すと、「社会保険を悪用する危険があるので」というような趣旨の回答をしてきます。
要するに、社会保険に入りたいと望んでいる会社を逆に加入させない可能性があるということなのです。
そのような事情があるので、未だに「罰則のない強制加入」という制度になってしまっているのです。
裏を返せば、経営が安定するまでは社会保険に加入しないのが望ましいとも言うことができます。
社会保険に加入するのは無駄ではありません
今迄の内容では、社会保険には加入するべきではないとの趣旨に取れるかも知れません。
誤解しないでください。
経営が安定したら、できるだけ早く自分達の将来のためにも加入した方が良いと思います。社会保険は、一見、大きな負担に見えますが、社会保険の掛け金は半額損金算入でき、しかも将来の保障を考えると割の悪い取引ではないのです。
巷で云われているように、「まったくの無駄」とは決して言えません。
考えてみてください。
自分で運用して失敗したり、65歳を迎えた時に年金なしで生活する不安を。
皆と同じように皆と同じことをする。
それは、最低限の安心を得られる最も簡単な資産運用なのです。
例えば、会社に利益が出た場合、どのような節税対策が最も望ましいかと指摘されれば、私は迷わず答えるでしょう。
法人税より、所得税が有利である。従ってできるだけ給与(役員報酬)で節税するべきだと。
役員報酬(給与)も税率が上がったら、社会保険に加入するべきだと。
理由は、税金で取られたら何も戻ってこないが、社会保険を掛けて取られた分は、年金という形で将来戻ってくるからだと。
つまり、同じお金を使うなら、少しでも戻ってくる可能性のある方に掛けるのが賢いのです。
だから、私は社会保険に加入しています。
会社設立したと同時に社会保険に加入した方が良い場合
最後に、経営が安定しなくても社会保険に加入した方がいいケースについて説明します。
それは、年収の高い人物が会社設立して、独立開業した場合です。
このような人の場合、退職すると国民健康保険に移行するのですが、その国民健康保険の金額が驚くほど高くなってしまうケースが多々あるのです。
そのような場合には、経営が安定するまで社会保険を任意継続する(但し、年金は国民年金になります)か、設立した会社で社会保険に加入するかのどちらかを選択する方が金銭負担が少なくて済むのです。
但し、任意継続した場合は、まったく会社の経費負担にできなくなり、社会保険の金額がこれまでの水準を維持されることになるので、結構な負担になるときもありますが、未だ経営が安定しない状況で、役員従業員一同が新規に社会保険に加入し、厚生年金の負担まで課されることを考えると十分に選択肢として妥当性があります。
しかし、設立した会社で社会保険に加入した場合、役員報酬(給与)を自分で決めることができるので、実質的に自分が払える金額の社会保険の掛け金で済ますことができるのです。
従って、年収の高い人物の場合、早期に設立した会社で社会保険に加入するのが有利といえます。
©2002-2009 山田行展行政書士事務所

